自我を発達させる人と、存在の位置が変わる人 ──トランスパーソナルの視点から見たふたつの成長ルートの違い
私たちは
「幸せになりたい」
「より良い人生を生きたい」と思いながら、
日々生きています。
そのために、たくさんの喜びとともに、時には苦労を乗り越え、たくさん努力もしてきました。
私たちは日々変化し、成長し続けています。
しかし、ある一定の時期を超えたとき、
こうした人の成長には、大きく異なる二つの進み方が現れます。
この違いはあまり言語化されることはありません。
本記事では、トランスパーソナルの視点から、
この「ふたつの成長ルート」を整理します。
■トランスパーソナルとは何か
まずはじめに、トランスパーソナルとは、
コーチング・心理学とスピリチュアルの交差点にある領域です。
それは、
・現実から乖離することなく
・何かをコントロールしようとすることなく
「すでに在る」ことに気づいていく意識の領域です。
セルフ(Self)の質感に基づいた意識の統合フェーズ、ということもできます。
■ふたつの成長ルート
成長がある程度まで進むと、人にはふたつのルートが現れます。
ひとつは、自我を発達させながら進むルート。
もうひとつは、存在そのものの位置が変わることで進むルートです。
■ひとつめは、自我を発達させるルート
こちらは、多くの人にとって、比較的なじみのあるかたちかもしれません。
思考や感情を整え、選択の精度を上げ、自分の力で現実を動かしていく。
NLP(神経言語プログラミング)やコーチングは、 この領域と深く関わっています。
* 信念(ビリーフ)の書き換え
* サブモダリティの調整(記憶や感覚の再符号化)
* パーツ統合(内的葛藤の解消)
こうしたプロセスを通して行われるのは、自我の構造をより機能的に整えていくことです。
整えるほどに動けるようになり、動くことで現実が変わっていく。
このルートの特徴は、
・成長が連続的であること
・拡張的に進んでいくこと
にあります。
同じアプローチが機能しなくなる時
しかし、このアプローチがうまく機能しない人たちがいます。
・整えているのに、どこかズレた感覚がある
・行動しているのに、満たされない
・理解は深まるのに、感覚が追いつかない
このとき起きているのは、スキルや意志の問題ではありません。
構造の前提そのものが異なっている可能性があります。
神経系という前提
ここで重要になるのが、 トラウマインフォームドな視点、それから神経系の状態です。
人の神経系には、
・安全(腹側迷走神経)を基盤にした状態
・防衛(交感神経/背側迷走神経)を基盤にした状態
があります(ポリヴェーガル理論)。
自我を発達させるアプローチは、ある程度「安全」が確保されていることを前提としています。
しかしもし、 神経系のベースが「安全」ではなく「防衛」にある場合、
・認知を整えても、身体が一致しない
・行動しても、どこかで神経系の反発が起きる
・結果、「できるけど苦しい」という状態になる
つまり、 上位(認知・行動)からの調整だけでは、構造に届かない
ということが起きます。
■ふたつめ、存在の位置が変わるルート
このときに開く選択肢が、もう一つのルートです。
それが、存在そのものの位置が変わることで進むルートです。
これは、トランスパーソナルとも言われ、自己超越とも言われる領域。
ここでは「積み上げ」ではなく「存在の位置が変わる」という変化が起きます。
・思考との同一化がゆるむ
・感情を“自分そのもの”として扱わなくなる
・自動反応がほどける
その結果、観察主体(Self)と自我が分離する、という変化が起きます。
これは、単なる認知の変化ではありません。
「どこから見ているのか」が変わる、という位置の変化です。
ロバート・キーガンの発達理論でいう
「主体(subject)が客体(object)になる」変化が近いですが、
トランスパーソナル領域では、思考や感情だけでなく、
自我そのものが対象として見える位置に立つ、という変化を包含します。
このプロセスは一時的に、
行動力の低下
方向性の喪失
また「わからなさ」 として現れることがあります。
外から見ると、停滞に見えるかもしれません。
しかし実際には、構造そのものの再編成が起きている状態です。
■下降統合というプロセス
ここで重要になるのが、下降統合というプロセスです。
・身体との再接続
・神経系の再調整
・Selfを基盤とした再編成
これを経てはじめて、“安全”が「目指すもの」ではなく「前提」に変わる段階に入ります。
神経系・身体・アイデンティティが一致し、自我が、機能的に再配置されます。
■行動の質の変化
この段階での行動は、
・防衛からではなく
・証明のためでもなく
存在(Self)から自然に立ち上がるDoとして現れます。
それは、努力して起こす行動ではなく、存在からにじみ出る行動です。
■ふたつのルートの本質的な違い
ここまでを整理すると、
●自我を発達させるルートは → 構造の中で最適化していくプロセス
●存在を深めるルートは → 構造そのものが変わるプロセス
と言えます。
この二つは対立ではなく、順序の違う、連続した発達の一部です。
ケン・ウィルバーの統合理論でいうと、水平的な発達と垂直的な発達は切り離されたものではなく、相互の関わり合いながら進んでいくものだと言えます。
もしあなたが今、
「整えているのに進まない」と感じているなら。
それは能力の問題ではなく、単に通っているルートが違うだけかもしれません。
人にはそれぞれ、 通るべき順序があります。
そしてその順序が整ったとき、 行動は努力ではなく、 自然な流れとして戻ってきます。
セルフ(Self)からの滲みとしてのそれは、以前よりも静かで、けれど確かな影響力を伴ったものになるでしょう。
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